サウスダコタ州の旅
ブラックヒルズの自然を訪ねて

　私が、アーカンソー（Arkansas）州滞在中に家族４人（夫婦、娘、孫）で米国中北部のサウスダコタ（South Dakota)州への自動車旅行を計画。２００４年８月２７日から１週間の予定だが目的地まで往復４日間が必要、現地では正味３日間しかない。ホテル予約もなしの出たとこ勝負の旅である。
　あらかじめインターネットなど調べ、岩山に４人の大統領の顔を彫ったマウント・ラッシュモアと野生のバイソン（アメリカン・バッファロー）を見ることを最低目標にして出発した。

　初日は、野暮用のため出発が正午に、どこまで行けるか心配で昼食も車中で持参のオニギリですませて走った。夕方７時にはネブラスカ（Nebraska）州東端のネブラスカ市に到着。途中、ミズーリ（Missouri）州とアイオワ（Iowa）州を通過したが、視界３６０°地平線まで全部トウモロコシと大豆畑の景観はアメリカならではの雄大さだ。
　ネブラスカ市は、スターリング・モートン（Sterling Morton）が提唱した「植樹日」の発祥地として知られており、その記念公園などを散策、街の中心にあるモーテル「APPLE INN」に宿泊した。

　２日目（8/28）、州境のアイオワ側を北上、サウスダコタ州には東端にあるスーフォールズ（Sioux Falls）からは入り、目的の観光地の多い西側まで走り抜ける。サウスダコタ州に入ると荒地にわずかばかりの草が生えた草原の景色が多くなる。

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　夕方５時前にバッドランズ（Badlands）国立公園に到着。 その名の通り荒涼とした岩山の不思議な光景が続く。
　このナショナルパーク入口の検問所で車１台につき１０ドルの入場料を払い、有効期間は７日間だと説明された。広さ約２４４，０００エーカーの敷地に、侵食された丘が広がり、岩の小塔がそびえ、そしてアメリカ最大のプレーリー（大草原）が広がっている。
　海底が隆起し、火山活動と雨による浸食が創作した異形に驚き、天地創造の不思議を感じた。平らな台地にはヤギの仲間がわずかばかりの草を食べに登り、ウサギもいた。
　その夜は、バッドランズ入口に近いモーテル「BADLANDS INN」に宿泊、周りは岩山の連なりしかない風景であった。

　３日目（8/29）、バッドランズをさらに西へ。この岩山の台地から掘り出された２５００万〜３５００万年前の漸新世時代の古代動物の化石が野外の所々にガラスのケースに入れて展示されている。
　大草原の広がる地域には、バイソンの姿も見え、プレーリードックも多数生息。プレーリードックは、草原に穴を掘って暮らすリスの仲間。コロニーには５ｍ間隔で巣穴があり、どの穴からも顔を出してちょこんと立っている姿が可愛らしい。私の孫（男子４歳）が追いかけると素早く巣穴にもぐってしまう。

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　バッドランド国立公園に続いてカスター（Custer）州立公園に入り、景色が緑豊かな森林に変わる。この州立公園も含めてこのあたりの森林地帯は、ブラックヒルズ・ナショナルフォレストに指定されており、マウント・ラッシュモアなども含まれているのだ。
　緑の中を走っていると、突然、森林を移動しているバイソンの群れに遭遇、１００頭ぐらいが次々と現れる。柵も金網もなく、数メートル先のバイソンの雄壮な姿にカメラのシャッターを何度も切った。
　カスター州立公園には、野生のロバ、ヤギの仲間、シカの仲間、そして七面鳥の群れなどを見ることができた。

　州立公園を通り過ぎ、マウント・ラッシュモア国定公園に入る。岩山に刻んだジョージ・ワシントン、トーマス・ジェファーソン、アブラハム・リンカーン、セオドア・ルーズベルトの４大統領の顔が間近に見える。 彫刻家グッゾン・ボルグルムを中心に１９２７年から１４年間の歳月をかけて彫ったものだ。この彫刻の前の展望台には資料館があり、完成までの写真や資料が展示されている。
　観光客もたくさんきている。しかし、私にはそんなに感動がわかない。この彫刻は、国家的支援のもとに完成したもので「偉大なアメリカ」にとっては難しいことではないだろう。また、ブラックヒルズは、先住民族スー族の聖地とも言われており、この地に大統領の顔を彫ることに疑問の声もあるようだ。

　その日は、夕食をマウント・ラッシュモア資料館のレストランで済ませ、近くのキーストーン（KEYSTONE）のモーテルに泊まる。この街の観光鉄道駅には古い列車がたくさん集めてあり、乗り物好きの孫はそれに乗り込んで大喜びであった。

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　４日目（8/30）、この日はクレージー・ホースの見学から始まる。先住民族スー族のカリスマ的勇者、クレージー・ホース（1842〜1877）の雄壮な乗馬姿を岩山に彫る作業がこの日も行われていた。 １９４８年から著名な彫刻家コジャック・ジョ−カフスキ−が、先住民族ラコタ族リーダーの依頼でブラックヒルズの岩山に彫り始めた。彼はマウント・ラッシュモアを彫ったグッゾン・ボルグルムの助手としても働いていた。
　コジャックは１９８２年に病死するが、彼の妻と１０人の息子と娘が引き継ぎ、いまも妻と子ども７人が働いている。
　作業開始から５０周年の１９９８年に顔の分だけが完成し、全体の完成予定は決まっていない。コジャックの「ゆっくりやれ」という遺言にしたがって安全・確実な作業を優先させているようだ。 国の援助の申し入れを拒否し、資金は寄付金や見物料で賄われている。もし私が生きているうちに完成するなら再び訪ねてみたい。

　午後からは、ゴールドラッシュ時代のゴーストタウン、デッドウッド（Dead Wood）へ。 いまは、観光地として栄えている。でも見所は少なく、観光トロリーバスに乗ったら、ガンマンとして有名なワイルド・ビル（早撃ちビル）とカラミティー・ジェーンの墓で半分以上の時間を費やした。
　「早撃ちビルがこの街へ来て３週間後に射殺されて有名になり観光資源になった」とトロリーバスのガイドが言っていた。カラミティー・ジェーンは、男勝りのアル中女が架空の話を自伝として書き、それが映画化されて有名になったとのことである。
　かって「飾り窓の女」がいた店は、ほとんどカジノになっていたが、２階の窓にはマネキンの飾り窓の女が座っていた。
　その日は、ヒルシティ（HILL CITY）のホテル「HOLIDAY INN」に宿泊、孫と娘は温水プールを楽しんでいた。

　５日目（8/31）、再びカスター州立公園へ戻り、ニードルストーンなど巨大岩石の造形美を探しに行き、これまでと違う風景を眺めることができた。

　次は、ウインドケーブ（Wind Cave）国立公園である。最初に発見された洞穴から強い風が吹き出したことから名前がついたという話だが、内部は大変広く迷路のようになっている。
　ケーブはいくつかのコースに別れており、ガイド付きで見学できる。しかし、方解石が主体の洞穴で内部の造形美などは石灰石の鍾乳洞に比べるて見劣りする。全体像はよくわからないが、世界で最も長く複雑な洞穴のひとつらしい。

　さらに南へ下がり、ホットスプリングス(Hot Springs)へ。温泉を探してみたが、冷泉に近いものがあるだけのようだ。それよりもマンモスの骨が発掘されたことで有名な街であり、その発掘現場に行ってみた。
　氷河時代、陥没した穴に水を飲みに来たマンモスが落ち、それが墓場のようになったもの。土地の持ち主が住宅建築のために土木作業をしたときに見つけ、すでに４４頭分の骨が発掘された。推定では１００頭ほどあるようだ。
　発掘現場をすべて建物で覆って資料館になっている。発掘されたマンモスは、若いオスばかりで群れから離れて行動していて穴に落ちたと考えられている。

　ホットスプリングスを最後にサウスダコタに別れを告げ帰路についた。その日は、ネブラスカ州アリアンス（ALLIANCE）のホテルに宿泊。翌日（9/1）は、さらに南下してカンザス（Kansas）州サリーナ（SALINA）のモーテルに泊る。９月２日にアーカンソー州に帰ってきた。
　サウスダコタ州について十分な知識もなく出かけ、７日間で約３５００ｋｍを１人で運転した。初めての長距離自動車旅行であったが予想以上に変化に富んだ楽しい旅になったことをうれしく思っている。
（2004.11.30記）

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